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20 . April
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14 . June
あわてて起承転結の起を公開。
別の名前で創想話に挙げる予定でしたが、
以前の自分の失態もあったのでもう少し精進してからあちらに張ったりします。

妖忌ものです。
今更ですが個人的妄想含みます。ご注意下さい。





夏も大方過ぎ、冷たい風に木がそよいでいる。
東の空では朝日が分厚い雲の間から滲んで見る事が出来る。
直ぐ近くの藪には多少少なくなった藪蚊が落ち目に達したようで、
はらりと花びらのようにちらりと落ちてそのまま動かなくなる。

その光景を何となくと言った様子でこの家の年老いた主はちらりと目で追っていた。
巌(いわお)のように逞しかったであろうその体躯は年とともに削げ落ち、
皮を張り詰めたような皮は当の昔に深くしわを刻み込んでいた。
老体の目はきらりと光ったかと思うと、しわだらけの手に持たれていた箸には一匹の年老いた虻が捕まった。


その虫をほいと捨てると台所から縁側まで流れてくる臭いに鼻を鳴らす。
彼、年老いた者は専ら大山大治郎と名乗っている。

河童も流れる川の前に家を建て数順季節は巡っただろうか、
長い間過ごした筈のその家には家具という家具は存在しなかった。
あるのは布団と、小さめの着物を入れる大箪笥と言う程大きくは無い箪笥と、
先程から味噌の匂いが漂っている台所の棚のみで、古めかしい畳が所狭しと床を占領していた。
そんな寂れたと言う表現が的を射るであろう家に今一人客が訪れようとしている。



客は立派な装束の尻尾を九つ持ち、両手を意味有りげに袖に隠しながら老人の目の前で一つ深々とお辞儀をする。
「八雲藍と申します」
その妖弧が言った。
大治郎がよくよく知る人物で、彼が世話になったある妖怪の式である。
彼女は庭と言うほど広くは無いその場で、大治郎寝た姿勢のままの大治郎を他所に話を続ける。


「この夏、里にて貴方の御手並みしかと拝見致しました」
大治郎は頷いて、夏に里であった事を深く思い返した。
茶屋で暴れる不届き者をこの手で投げ、突きまくって教養を叩き込んだ覚えがあった。
恐らくはその様子の一部始終を見ての事だろうが。

「それで、八雲の使いがこの老いぼれに何の用事であろうか」
物柔らかな声で問うと、彼女は足を一歩進めて問い返して来た。




「今日は八雲の使いできたのでは御座いませぬ。藍として参りました」
「里で子供を投げられる程度の老いぼれに何の様なのかと聞いておるのだが」
「これ以上芝居をされなくても宜しいでしょう」
「ま、そのような……」
「そのようなとは?」
「芝居とは今一度理解しかねる」
「妖忌殿。大治郎とは少々古い偽名で御座いませんか?」
「ほう、とうとう見つかってしまったか」

髭に手を当て、観念したようで何処か愉しむような仕草をする大治郎もとい、妖忌。
彼こそは、魂魄妖夢の師匠であり…、血縁であった。
訳あって彼は主を背き、身を隠しているのであった。
それ故八雲の使いの妖怪には幾度無く無理に戻されそうになったことか。

「しかし戻れと言われても戻らぬよ」
姿勢を直し、意思だけは確りと伝える。
その姿勢は座りながらでも確実に彼女に殺気を放っている。
「いえ、八雲の使いでは御座いませぬ故、用件はそれとは違います。貴方の御子女の事で…」
「何?」
「世の為…? ではなく人の為…と霊の為になる事で御座います」
「ははあ………?」
「お手並みをお借りしたい」
「詰まる所?」
「彼女は両腕を狙われております」


彼女の目の前で一陣の風が吹いたかと思うと、老体の姿はとうに消え失せていた。









霊界への階段を駆け上がる。
直ぐ近くの林の影から殺気が此方を刺すが、一切関知せず一心不乱に駆け上がる。
老体に鞭打って上る様、とはいう物のその動きはとても体の齢50を過ぎている様には見えぬ。

何処か若々しいその様は、通り過ぎるものの目を確実に引き寄せている事に、ようやく気が付いた。

「流石にこの格好のまま行くのは不味い」
子不幸に半ば子を捨てるように出て行った彼に重く、彼の思考の中の彼女はしっかりと拳で老体の腹をえぐっていた。
剣のみを教え、親として何も出来なかったこの老いぼれに何が出来ようか。
親以前に人として、魂魄として失格であると彼は思った。

(今更どんな顔で会えばいいのだ)
気付けば妖忌の足取りは階段を最大速度で駆け下り始めていた。



「うーむ」
良く考えれば済む事ながら、妖忌は何故自分の娘の両腕が狙われているのか知りえていなかった事を今更に気づいて、
即座に自宅に歩を歩み始めるのだがそれは彼が数刻程思い悩んで、腹の音が鳴ってからの事であった。





後を追ってきた式に事情を聞きながら夕餉を馳走になり、妖忌が里を出たのは五つ(8時頃)を回っていたろう。
老獪ながら剣術を嗜む妖忌と藍が夜歩きをしたところで案ずる事もない。
しかし彼女の都合はこれ以上余談を許さないらしく、その場で別れることになった。

「しかし恥ずかしい所をお見せしたなぁ」
「気持ちは解りますが、そう慌てなくとも時間も余裕もまだまだありますよ」
「むむぅ…」
高潮した頬を掻き、妖気は照れくさそうに笑った。

「某も娘想いなものだな」
「子煩悩でない貴方は貴方ではありませんよ」
「ふむ、単刀直入にどういう意味か教えてくれないか?」
「親馬鹿」
「む」
「馬鹿な手合いの頑固者」
「ぐっ」
「そして恩知らずですかね?」
「……」

非道な言葉の暴力にて妖忌は静かに吐血を催す程精神的な苦痛を受けたが、
それとは対照的に藍は逆になにやら生き生きと罵詈雑言を……一刻程吐き続けた。
そして何か…、恐らくは長く主人から離れていた事を思い出したのだろう。
別れの言葉も無く頭を下げ、辻風と共に妖弧の姿はその場から消え去った。







「ふぅむ、それにしても不味い事になった」



と、ひとりごとを呟いた。
里の外れ、博麗神社の直ぐ腋ならぬ脇の同情を根城にしていた妖忌は
その帰り道を一歩一歩踏みしめつつ、事態を己の頭の中で収束させていた。

曰く、
妖夢に縁談が持ちかけられたと。
曰く、
その場にて妖夢は「私より強く無ければ嫌で御座います」と言ったそうだ。
曰く、
自分と同じく過保護な幽々子様が如何にかできないか悩んでいるだの、
曰く、
妖忌の教育方針が問題であっただの、
剣以外も教えれば良かっただの、
やれ一般常識くらい親として教えておけだの、
あれ本当にお前は親としての資格があるのか?だの、
そろそろ「だの、」がゲシュタルト崩壊してきただの。



「あきれた」
再びひとりごとを呟く。
剣ばかり教えて親として何もしなかった結果がこれか、と。
親失格と言えるか言えないかの境界に立たされた彼に襲い掛かるのは冷たい夜風のみであった。


黒縮緬の羽織が風になびく。
異様に風の強い夜だと感慨深く考えてみた物の、矢張り何処かおかしい。
何処かで、かしゃりかしゃりと小さな音がしたかと思えば再び一陣の風が通り過ぎる。

……と思いきや何やらにゅにゅっという音がしたかと思えば鳥の鳴き声が辺りに響き渡り、
しんと辺りは風一つ吹かぬ静かな夜へと様変わりした。
天狗の悪戯というものなのだろうか?
少なくとも天狗に対する予備知識の少ない妖忌はそう考える事しか出来なかった。
気にする事無く、妖忌はふらふらと帰り道を歩く。
そして帰りすぎたことに気が付いた。



「…おや?」

見れば既に月に照らされる暗闇の平原の景色は、
光の射さぬ森に切り替わったかの様に妖忌には思えた。
ぼんやりと考え事をしながら歩いていたのが良くはなかったのだろう。

慌てて振り返るとまだ森の入り口らしく、
月の光が木々の間から差し込んできている。
その様に安心してほっと一息付くと、迷う羽目にならずに済んだと少しばかり安堵した。

横で流れる木々を横目で見ながら唯ひたすらに歩を進める。
そしてゆっくりと一刻程歩いてからだろうか、弱い光が妖忌の目に差し込んだ。
松や杉やその他面妖な植物が生える魔法の森の入り口に、
僅かに残っている何かが通り過ぎてついでにそこが道になったかのような草の生えぬ道と、
これまた面妖な、見たことも無い物が無造作に表に捨てられている木立ての家があった。

その捨てられていた物の中には刀にしては小さく、不思議な形状をしており妖忌の興味を見事にかっさらったのだろう。
いつしかその家の前で身体の酒気が冷め切るまで居付いてしまっていた。


「それはククリ刀という物です」

気付けば自分の目の前で青年が自分の事を見下ろしていたことに気付き、
慌てて腰を上げると弁解……、無用だろうがするためにそれをぽいっと手放した。

「おお済まぬ、些か邪魔だっただろう」
「いえ、自分の店に訪れるお客様に邪魔等といった不埒な事は考えませんよ」

お客様はね、と意味ありげに呟く銀髪の青年に妖忌は何処か懐かしさを覚えた。
じいっと見るとどうも人間と何かの混ざり者らしく彼の気配は人のそれとは少しだけ違っていた。
青年の何処か少年の面影を残した顔がほんの少しだけ笑っているようにも見えたが、
余談ながら絶対に見間違いだと後々口にする事になった。



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プロフィール
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刑事ボロンゴ
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34
性別:
男性
誕生日:
1989/11/08
職業:
学生兼店員
趣味:
楽の探求
自己紹介:
ヘタレ、知らない間に告白されて知らずに振っていたというポルナレフ的な体験をするような大ボケ。
散髪する金が勿体無い今日この頃。


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