麻雀終わって眠たげな眼でもって書いた駄文…。
なんというか寝るとテンションがおかしくなると言うか、まず書いといて自分の気が触れている様な気さえしてきました。
なんというかヤバイ、やばいよ。orz
だが貼る!
その日は朝早くから気分が悪かった。
別に雨が続いていたとか風が強かっただとか空がどんよりしていた訳じゃない。
ただただ、朝っぱらから気分が最悪だった。悪い夢を見た様な、それで居て内容を思い返せないもどかしい感覚。
時間が経ちくつろいで本を読んでいる今でも不快感を拭いきれないでいる。
その嫌な感覚は朝起きたときから始まっていて気付けば寝巻きが肌蹴ていて寝癖も何時もより酷かった。
なによりも起きようとした瞬間に身に襲った倦怠感と疲労感は耐えがたい物であった。
こんな目覚め方をしたのでは気分も機嫌が悪くても当然だろう、しかしそれを他人に当てるか当てないかが常識人と子供の違いだと思う。
だから八つ当たりなんて下らない考えを起こすよりも早くにカウンターの席に腰掛け、本を貪るように読んだ。
世は世とも読書の秋と銘打つこの季節は読書に最も耽られる季節だ。
春には春特有の柔らかく暖かい空気が存在するがアレは長時間共にすると何時の間にか眠り込んでしまうし、人類最大の脅威である花粉が蔓延する。
夏は最も読書に向かない。夕方頃はヒグラシがカナカナ…キリキリ言っているように聞こえるのは僕だけなのだろう。
そんなヒグラシが心地良く鳴いてくれる夕方の涼しい頃を除けば日中は地獄だ。五月蝿いし熱いし虫が出る。
冬も寒くて本を読んでられないなんて事は無いし、炬燵があるので天国を味わえるもののアレで風邪を引くと長引くから困り者だ。
その点秋は花粉の無い春。ひぐらしが鳴かぬ夏の夕刻。炬燵の中の冬。最も読書に最適な時期が最も存在する。
故に僕は銘打たれたこの読書の秋の季節が好きなのだが……。
「…………」
そんな良い状況の中にいると言うのに内容が殆ど頭に入って来ない。幾ら読んでも情景が伝わって来ないのだ。
昨日読んでいたときには読みふけられる内容だったはずなのに今日に限ってそれが来ない。
このもどかしさは一体なんなのだろうかと、苛立ち紛れに混ざり物の茶を飲み干した折に彼女が何時もの調子で店にやって来た様だ。
どうやら此方に来る前に神社にでも行っていたのだろう、神社のある方角からこちらに……。何故か彼女は店の前を通り過ぎた。
今日は寄らないのかと考えているうちに彼女は浅海でもしてきたのだろう。入り口から真っ直ぐ此方に飛んでくる彼女を見て確認する。
このままでは彼女の神風特攻により何時ぞやの様に、店の商品に被害が出る事だろう。
しかし事は杞憂に終わった。
そのまま最近仕入れた魔法の箪笥に見事な体当たりをぶちかました彼女。
すると箪笥の強度が勝ったのだろうか、弾き返されるように箒から叩き落されゴツッ!と言う擬音と共に地面と接吻を果たした魔理沙。
苦痛で呻き声を上げるがどうにもならないのか知らないがしばらくそのまま動かなかった。
「痛つつ…、邪魔するぜ香霖」
しばらくして痛みに慣れたのだろう。砂埃を被り涙目になりつつ挨拶をする魔理沙。
そんな様子の彼女を見て溜息を洩らしてしまう。思い出したように永遠亭印の救急箱を持つと彼女が起こした被害を確認する。
表にある商品が風に煽られて倒れたりしていたが、表に置いてあるのは取られても良いようなガラクタだから特に問題は無いだろう。
涙目になりつつ呻く魔理沙放って置く事には出来ないし、ガラクタが倒れた所で大した損害は出ないだろう。
……宝物のようなガラクタだけどね。
「邪魔するなら帰れと返すのが最近の流行だと聞いたけど本当かな」
「嘘っぱちだぜ、誰だそんな事を香霖に教えた奴は」
「そんな事は置いといて診てあげるから、こっちに」
救急箱をカウンターの上に置き、手招きをすると魔理沙は直ぐに此方に来た。
素直な子に育った物だと思うものの、この暴走癖と泥棒癖さえ無くなってくれれば良いのにと愚痴を内心に洩らす。
すると僕の反応を見て思う事があったのか。地べたに座り込んでいる魔理沙は不満そうに眉を顰め此方を睨んでくる。
「そっちから振っといてその反応は可笑しくないか」
「はいはい、魔理沙が可笑しい事は日常茶飯事だったね御免御免」
「あしらわれている気がするがこれは気の所為なのか」
「消毒液で足を洗っているんだよ。あしらうのとは違う」
「いやその論点と言うか何と言うかも違うと思うぜ」
「気の所為だよ」
「そうかそうか」
「納得出来たのか……すごいな」
「よし、香霖覚悟しろ」
「褒めたのになんでさ」
彼女が右手に拳骨を握るよりも早く治療を終えて立ち上がると即座に彼女の射程外へと逃げ込む事にした。
自分でも手馴れた物だと実感できるほど早くに治療を終えられた物だ。再び本を手に持ち魔理沙にカウンター越しに座ると、
彼女はまだその治療したガーゼを触りつつへー、ほー、と唸っていた。獣か。
「また腕を上げたな、もう直ぐでヤブ医者と同じくらいのレベルになれるぜ」
「それ程君が怪我をする機会が多いって事だね。女の子なんだから怪我には気をつけなよ」
「そう言うな。こんな可愛い女の子を治療と称して近付ける上に医師としても修行できるなんてな、これほど良い状況は無いだろ?」
「面倒だから勘弁して欲しいよ。第一、医者家業を始めても此処で閑古鳥が鳴くのは変わり無いだろう。それとレベルって何だい」
「治療の腕だぜ。主にアーム」
「褒められているのか皮肉られているのか解らないな」
「好きな意味で取ると良いぜ」
「よし、魔理沙覚悟しろ」
「自虐好きだな香霖は」
手に力を込め拳骨を作るが即座に射程距離外へと逃げられてしまう。
しばらく見ない間にまた素早くなった物だ。そのうち本物の鼠と間違えられるんじゃないだろうか。
それはさておき体に残る倦怠感に違和感を覚え伸びをするが如何せん効果が無い。
もしかしたらこの感覚は寝起きとは無関係なのだろうか。
ふと気付いて魔理沙の方を見やると何故か顔を朱に染め上げふるふると震えている。
耳まで真っ赤になるなんてこれだから肌が白いと目立つから困るとか彼女が言っていたことを思い出す。
なにやら自分の方の辺りをしきりに見ている様だ。
何か付いているのかと思い、見たが其処には何も付いてはいない。
一体何なんだと、少々苛立ちを交えつつ魔理沙に問うと、
「こ、香霖。そのうなじの赤いのは何なんだ」
「うなじの赤いの? ちょっと待ってくれ自分で見れないから」
「ほら鏡だ」
ぶっきらぼうに投げられた持ち歩けるサイズの手鏡を顔に当たるほんの少し前に受け止めると文句をぼやく前にうなじを見ようとする。
するとそこにはしっかりと虫刺されに酷似したキスマークの様な物がはっきりと浮かび上がっていた。
虫刺されにしては範囲が大きいし中央は赤くなってないからそれと見間違えても確かに可笑しくは無い。
だが可笑しい事に僕はその様な行為を行なう相手も暇も記憶も存在し得なかったのでそうそう慌てる事は無かった。
だけど魔理沙に勘違いされてしまっているこの状況には慌てざるを得ない。覇王翔吼拳を打たざるを得ない。
「まさか香霖に女を抱くような甲斐性があったなんてな、はははは」
「良く自体は掴めないけど無表情で笑うのは怖いから止めてくれ」
「それで香霖の純情を奪ったのは何処のどいつだ? 紫か? それとも――」
「純情とか言うな。童貞とか言うな。覚えが無い」
「そうか酒に酔った勢いでやっちまったのか、そうか香霖を粛清しないとな」
「昨日は来客者なんて居なかったしそれ以前にそういう欲求も無いから」
まるっきり思い当たる節が無いので何故か不機嫌になっている魔理沙を煽てる方法が見つからない。
僕が恋人を作ることがそんなに悔しい事なのだろうか? 誰かが言っていたように僕と父親の像を被せているというのも本当なのかもしれない。
それにしてもこの症状は何処かで――
と、不意に違和感。些か閃いた様な感覚に近い何かに追われ、本棚を探り目的の本を手に取ると即座に目的の項目を開く。
その本の題名は人外によって起こる弊害。つまりは人外によって起こされる病気や呪いを事細かに記された列記とした医学書なのだが…。
パラパラを頁を捲って目を交わして行くと、その違和感。第六感と考えても良いだろう。
それがあるページに異様に反応したので見てみると其処には自分に当てはまる症状がそのままその項目に書かれていた。
「あった、これだよ」
今にも襲い掛からんと八卦路をこちらに向ける魔理沙にその項目を押し付ける。
後一歩遅かったら僕は消し炭になっていたのだろうかと思うと身震いが止まらない。間一髪とはこの事だろう。
しかしあれ程店内で暴れるなと勧告したのにこうもあっさりと破られると逆に清清しく感じるのはきっと僕だけだろう。
「んあ? 言い訳は聞かん、虚勢してやるぜ」
「虚勢とか怖い悪ノリはそこらで止めてちょっとこの項目を見て欲しい」
「んー? 吸気被害の特徴?」
魔理沙が見ているその項目にはサキュバス、即ち精気を吸う悪魔に襲われた人間の末路から予防法まで詳細に記載されている。
昔はその悪魔が軍事利用されていたとかなんとかという事も小耳に挟んだ事がある物の真偽は定かではない。きっとただの虚言だとは思う。
「ふむ、寝ている男のうなじから……やはりね」
最後まで読み思い当たる節が完全に一致したのを確認すると、
即座にその本を魔理沙から取り上げて概要だけ…卑猥な表現を伏せて口頭で教える。
「つまり僕の場合は魔理沙が言ったそれだろうね。
基本的にそれら……まぁ気を吸って生きる者には記憶を如何にかする能力は持っていないのが殆どって話だそうだ。
彼らは、正確には彼女らかな、はの方が合ってるかもしれないね、一部特殊な者を除いて殆どが異性を襲うそうだよ。
夜寝静まった街中で獲物を探して徘徊していると書いてある。どうも日本の妖怪ではないらしい。
夜中の街中で見られるのに里から外れた場所に住んでいる僕が襲われた理由はきっと里の警備が強すぎるからだろうね。」
こういう弊害は勘弁して欲しい物だと話を区切る。
里の強すぎる警備の弊害が此処に来て現れたと考えるのは些か早計だと思ったが、
事実その所為で里の近隣以外の場所が危険地区扱いされているのも現実である。
それらの場所で問題が起きれば霊夢や依頼された魔理沙あたりが動く事になるので、少なくとも魔理沙はその弊害を知っていたのだろう。
成る程、と言わんばかりに相槌を打っているが…ちゃんと聞いている振りをして聞き流している事がある。
その確認の意味で話を区切ったのだがその心配は真剣に聞いていた魔理沙自身の手によって杞憂に終わった。
「彼女らに精気が吸われた者に起こりえる具象と言うのが拭いきれない倦怠感とこの説明し難い欲求。さらに体力がその日だけ衰えるそうだ。
僕は今日は外出してないから気付かなかったけれど多分数刻歩くだけで伏してしまうんじゃないかな。
それにしても何で彼女は其処で止めてしまったのだろうか解らないが、きっと急いでいたんじゃないかと思う。
さもなければ普通は…起こして行為の最後までしてしまう。うなー、首筋からの吸収なんて事は余程暇が無かったのか僕が対象として見られなかった位しか考えられない。
恐らく霊夢とか知らない強敵当たりに追われていた最中にとかに気が少なくなってしまって手近な場所に居た僕を狙ったと考えるのが妥当だと思う。
今度霊夢に聞いてみるよ。後、他の事は症状的に起きてないからされてないとは思うけれど――」
「ん? なぁ、話の途中で悪いがちょっと良いか?」
「最近の君がこの手の事で悪いと思うことなんてないと思っていたのだけれど、何だい?」
「説明し難い欲求って何なんだ?」
きっとその質問を投げ込まれて僕自身はきっと驚いたような表情をしているだろう。思わず目をカッと開く。
表現をわざわざボカした事が裏目に出たのか、不味い事に魔理沙に逆に興味を持たれてしまった様だ。
このままでは不味い、少し先のオチが見える。
「――多分これ以上変な事は起きないと思う。まぁつまりは誤解って事だよ」
無理矢理話をぼかしてやり過ごそうと、茶を持ちに行こうとしたのだが。
「おぉっと、待った。何処に行くんだ香霖」
3秒で捕まった。
「茶の御代わりを入れようと思ってね」
「そうか、なら30秒で支度しな」
「技術師見習い少年じゃあるまいし無茶言うな」
恐らく真意を知らずに興味本位で聞いているのだろう。彼女は興味津々な様子。
そして完全に逃げられない彼女に捕まれているこの状況、俗に言う崖っぷち。
真意を告げるべきか逃げるべきか、答えは決まっている。
逃げるべきだ。しかし逃げられない、逃げたい、逃げられない。
王手、チェックメイト、喉もとの刃、突き付けられる銃口。
魔理沙のか細い腕にはそれらを彷彿とさせる何かが確かに存在していた。
観念した僕はその言葉の真意を口にする事にした。
「あまり口にしたく無いのだけど…駄目かい?」
「香霖が口にしたくない事なんてあったのか」
「僕にだってそういう物はあるよ。だから口に出すからこれだけは約束と言うか確認して欲しい」
「んあ? 私に脅迫でもする気か」
「違う、約束して欲しいんだ。口に出してもこれ等の事柄には明確な原因がある
今回の場合は精気を吸うそれらの所為で僕がしばらくの間そうなってしまっただけだ。
だからこれから僕が口に出す言葉を聞いて、先ず口に出して思うことがあると思うんだ。
だけど普段の僕はそれについて一切、全てと言って良いのかも知れないがそれについて考えを起こしたことが無いんだ」
何時に無く真剣に話す僕の口ぶりに思うことがあったのだろう。
魔理沙は不信感を露にする様に表情を歪めていた。
「香霖が話好きなのは良く解ってるが、今回はまどろっこしいのはナシで頼むぜ」
「つまりは誤解するな。偏見を持つな。察して欲しいという事さ」
「解った」
「良し、決断が早くて結構。つまり性欲を持て余す状況に陥っている訳だ。」
頭の中で段ボール箱がショウタイムと言うシュールな光景を思い出されると共にその言葉と空気が死んだ。
いや、間違いないたった今息絶えたのだろう、場を沈黙が支配した。
さもなければこんな辛い沈黙が起こって良い筈が無い。
だがその沈黙は即座に終わりを迎える。
「あー、つまり今日の香霖は変態と言う訳か」
「納得してくれて嬉しいよ。それと早く出て行ったほうが良い」
案外要領よく納得してくれた様だった。
うん、誤解も生まれず被害者がでる訳でも無く事が終わってよかったよかった。
席に座り再び興奮鎮静剤入りの茶を啜る
「お気遣い感謝するぜ。私もまだ純情を汚す程愚かじゃないんでな」
「僕も行為の対象としては見れない様な君に陵辱しないで済んで良かったと思うよ」
また急に空気が死んだような、大蛇の目の前に居るようなあの感覚が押し寄せてくるのを感じたのは杞憂ではないだろう。
目の前の魔理沙はビクッという身震いと共に完全にその場で凍結し、なにやら少しづつ身震いを始めていた。
よく見ると耳まで真っ赤にしてなにやら呪言を呟くように何か独り言を溢しているようであったが、僕の耳に届くような距離ではなくて良く聞こえなかった。
気になって立ち上がり彼女の傍に行こうとすると急に此方に振り向き馴染みある例のものを向け、魔力を込め始めている。
ちょっと待った、今回もマスパ落ちかい? 懲りないなぁ。
「…そんな変態はこのまま放置しても不味い。今日は寝てろ!」
そう言う彼女の顔から水の雫が落ちるの見えた気がしたがどうなのだろうか。
完全にそれを確認する前に目の前に広がる白い光線。
今回もやっぱりこういう役回りらしい。
僕は諦めてその光の奔流を抱きかかえるようにして、最終的に流されるように飲み込まれ――
「香霖の馬鹿ぁああああ!!!」
――少なくとも光に呑まれ意識が遠のく中でそんな言葉が聞こえた様な気がした。
その声は数年前のまだ少女としての面影が残されている魔理沙を思わせるもので、昔を懐かしくさせる。
今ではこんな乱暴な子になってしまったけれども、彼女の中にそんな純情な心が残っていると良いのだけれど。
くだない事を考えつつ意識が靄に包まれる。
……今日は本当にロクな事が無い。