早速SSが出来ているので置いておきますね。
この作品は一時のテンションに身を任せて書いた作品で
自分の中では黒歴史の部類となる物を修正した物です。
正直あの頃の自分恥ずかしいorz
酒を飲まずに酔ってましたなぁ・・・。
それではドゾー。
日が沈み、辺りも静かになった頃。
雲に覆われた空。
月の見えない夜に唯ひたすらに響く単調な音があった。
トン カン トン トン
その作業音は極めて一定のリズムで発されている。
中を覗いてみるとある青年がなにやら木材をトンカチで打ち合わしているようであった。
銀髪で眼鏡をかけたその青年は確かこの店の店主である。
その目は真剣そのもので、普段のふぬけたといえば言い方が悪いが、
気が抜けた彼を見ている人物は想像もつかないほど真剣な表情で何かを作成しているようだ。
黒いもややらおがくずやら大量の新聞紙とバネが散乱している。一体何を作っているのだろうか、謎である。
工具からドライバーを取り出すと慣れた手つきで部品を接合させていく、
その謎の物体の先端部分の球体を模した場所に火薬のような物が仕組まれた頃、
「よぉ香霖、夕飯を貰いに来たぜ。」
夜中の来客に少々ご機嫌斜めな彼は見向きもせずに一度止めた作業を続行した。
「やぁ、君かい?早速だが帰ってくれないかい?時間も時間だしそれに大体そんな暇は無い。」
「ひどいぜ、ひどいぜ、酷くて泣くぜ。」
「そもそも今日夕ご飯をご馳走してやるとは一言も言ってない筈だけど?」
「いや、ちょっと実験してたらキッチンを不手際で爆破してしまってなー。」
いやーははははは、と笑う彼女。
よく見ると彼女の服装の白いエプロン部分が焼け焦げて居るのがわかる。
しかし普段の彼女の衣装が黒っぽいので他に焼き焦げてる部分があっても気付けなかっただろう。
「そうかい。」
気にする様子も無くは素っ気無く答えて片目に意識を集中し、ドライバーの先を確かめた。
ドライバー自体は無縁塚に転がっていた型の悪い物だが使い勝手は悪くない。
そしてカウンターの上に所狭しと散乱している工具を探って必要な機械を取り上げる。
「つまり、約束もしてないのに困ってるからと勝手にうちのご飯を奪おうとしている訳かい?」
「違うぜ、勝手に貰っていくだけだ。それにそもそも香霖の物は私の物、私の物は私の物だぜ。」
「たしか異世界の絵巻物にその台詞をよく使う豚ゴリラが居たような気がするが、君はそれと同次元と言う訳か。」
ため息を一つ吐いてみせる。その豚ゴリラの行動を紫が言うにはジャイアニズムと言うらしいがよく解らない。
きっとその人物がやっているように略奪や暴力などの行動を指すのだろうか?
「ああ?人をゴリラ扱いするなんて酷いぜ?」
「豚ゴリラ、と言ったはずだけど?」
「やっぱり今日の香霖は酷いぜ、何時もの数倍酷い。」
その言葉の通り今日の彼は何時にも増して冷たかった。体中の血管に氷水が流れているのか問いたくなる程に。
正直彼女に反応してる時間すら惜しい、睡眠時間が削られるというのが冷たくする理由だったりする。
ふと不思議に思ったのだろう、彼女つまり魔理沙が尋ねてきた。
興味がありそうな視線をこちらの方に投げると笑顔で聞いてくる。
「今頼まれた仕事をしてる最中でね、期日は明日だから急いでやらないと間に合わないんだ。」
声のトーンを落としてそう言うと、螺旋にも見える部分に円柱状の筒を通して固定する。
型を間違えたのか、すぐにヤスリで調整をし、取り付けた。
「それがどうかしたのか?」
「締め切り前の苛々とだけ言っておこうか。」
「・・・?よくわかんないな。」
きっと常日頃自由奔放に生活している某T作者氏みたいな彼女には期日が迫る恐ろしさなど知る由も無かったのだろう、
興味なさげな半眼でこちらを見やる。
「それで何を作っているんだ?」
「プライバシー保護の為黙秘させてもらうよ。」
軽く追い出すように手を振ると中心部分に軽く慣らして行く、これによりある粉末の行き届きが良くなるのだ。
「・・・やましい物なのか?」
「黙秘させてもらうよ。」
すると魔理沙が黙り何かを考えている、大体理解して欲しいことなのだが。
客商売という物はお客様優先である。
そのためお客様に対して不利益に成る様な事が言える訳が無い。至極全うな事だ。
だから依頼された商品は期日までにしっかり収めなければならない、期日を守るのも客商売の基本だろう。
それでは魔理沙は客ではないのかと聞かれるとはっきりとNOと答えられる。
実際彼女が買い物を行うという事は無い、断言しよう。有得ないのである。
彼女は自分の欲しい品を見つけると購入しようとするのではなく奪うのだ。
本人は「死ぬまでツケだぜ。」とかほざいている様だが、それは実質泥棒と然程、いや全く変わりは無い。
そんな魔理沙をお客様と同列に置くことはお客様に対して大変失礼であるよまで霖乃助は考えているらしい。
――少なくとも機嫌が悪い本日の香霖はそう考えているそうだ。
だが流石にそれは不味かった。相手が悪すぎるのだ、なぜなら――
「香霖。」
「なんだい魔理沙。」
「お前が黙秘できる立場じゃないのは理解出来ているか?私はさっきから酷いことばかり言われて苛々しているんだ。そのキレイな顔をぶっ飛ばしてやるぜ?」
「・・・。解ったからその物騒な物を仕舞ってくれ。(キレイ?)」
いい加減霖乃助の態度に痺れを切らした魔理沙は明らかに不機嫌な態度を示している訳だ。
懸命な読者であれば誰しもが想像できるあの危険な物だと解るだろう。
一瞬ニコッとするとそれを仕舞う魔理沙。
だいたい至近距離で魔砲なんて物を受けた日には色んな意味で不死身と言われている彼でもたまった物ではないだろう。
もう一度ため息をつくと観念したように霖乃助は言葉を紡いだ。
「仕方が無い、あまり言いたくは無かったんだけどね。」
「御託はいいからさっさと教えるほうが懸命だと思うぜ?」
「ああ、僕もそう思うよ。」
「で、なんなんだそれは。」
一呼吸置いてから霖乃助が言う。
「無能部下お仕置機ボンバー君シリーズさ。」
「・・・は?」
怪訝な表情を浮かべるとピタリと動きを止める。やはりお仕置といわれてもピンとこないのだろうか
「いや、だからそんな物を何に使うんだよ。」
「だから具体的に言うとだね、無能な部下をお仕置する時に使うんだよ。」
「・・・おしおき?」
「そう、怪我せずさせずに無能な部下をいたぶれる最高の商品さ。あとは設計者の指示通りにレインボーカラーに塗装すれば完成だよ。」
「誰がそんな物を作るように依頼して誰に使うんだ?そもそも誰だそんな危険なものを考案した最低な奴は。」
ボンバー君をベタベタ物珍しそうに触りながら言う。
「図解には孤児としか書いて無いな・・・、それと依頼しに来たのは件のは閻魔だよ、ちなみに今魔理沙が触っているのは無能部下顎砕き機Mk-7、怪我させずに的確に顎を砕くのに使う。」
「・・・。(・・・いや、顎砕けるって怪我じゃないのか?)」
「このボンバー君シリーズは優秀作品でね、100を超えるバリエーションで無能な部下を怪我させずにお仕置できる夢の作品さ。」
「どう考えてもサボり死神に使う気満々だな。」
ぞっとした様子で魔理沙が指摘してくるが、敢えて無視してなんとなく誤魔化して見る。
「そうだろうね。門番の子と言う考えは無いのかい?」
「あるわけ無いぜ、閻魔が依頼したんだろう?」
「むぅ・・・。流石に誤魔化せないか。」
頭の中で一瞬彼女の悲鳴が聞こえたような気がしたがそれを振り払って作業を続ける。
彼女には気の毒だがこれは固定客離れを回避するために致し方の無い事なのだ。
大切なお客様の信頼を失うという事はその店の命が無くなるのと同義なのだから・・・。
「なぁ、香霖。手加減はしてやってくれよ・・・?というか勘弁してやれよ。最近あの閻魔はお仕置にスネギロチンとか使い始めたらしいじゃないか。」
「うん、それ無理。大体怪我させずに顎を砕くって相当無理があるだろ?ただの宣伝文句だよ。というかそもそもスネギロチンのアイデアを授けたのはこの僕だよ。」
「だったら怪我させずなんて付けるなよ!というかお前が教えたのかよ!」
「教えた知識はしっかりと役に立っているようだね、うんうんいい事だ。」
「いやいや全然良くないだろ!再起不能になったらどうするんだ!」
少女が軽く絶叫する。
そして思い出したように図解と余分な工具を仕舞うと向き直った。
「それとこの図解はこのボンバー君の代金だから粗末に扱わないでくれよ。泥棒もお断り。」
「そんなもん使うかっ!」
「・・・使わないか?」
「お前が私に対してどんな印象を抱いているか良く分かったぜ。」
「泥棒、ツケ常習犯、器物損壊、住居不法侵入などを繰り返すA級危険少女。」
バンッ
「少なくとも誇張広告する奴に言われたくない!」
両手で思いっきり机を叩かれた所為で作った無能部下おしおき機ボンバー君が音を立てて倒れそうになるのをすかさず押さえた僕は、
「まぁそのくらいの誇張広告は許される範囲内さ。あと気を付けてくれ、今倒れそうになったのは無能部下焦がし機で仕込んだ火薬の量が企業秘密だから人に使ったら多分死ぬ程痛い目に逢う。うん、というか死ぬ。」
と注意しておくことにした。
「尚更こんな物つくるなぁああああああああああああ!!」
会話が微妙に成立して無いと気付いたようで地団駄を踏んでいる。
そんなこんなしている内に完成したボンバー君シリーズを仕舞おうとするが仕舞うスペースが無いので足元に置いておく。
「それとね、それより前に完成したものがあるんだが見るかい?」
「ぜぇぜぇ、なんだよ?またロクでもない物か?ったくロクでもない奴だな香霖は。」
呆れ疲れた様子でこちらを睨む来る彼女に向き直り息を少し吐いて、棚に入れておいたそれを引き出す。
「・・・ツケ滞納者催促機がんたむ君ナイトメアタイプさ、これさえ使えばどんなしつこい滞納者でもしっかりツケを払ってくれるという優れものでね、ちなみにこのロボの兵装はツケ滞納者燃やし機と全身砕き機と次元消滅機と魔法封じ機と弾幕発生器とがセットになっているんだ。」
対魔理沙究極稼動兵器誕生の瞬間である。
彼女の動きが一瞬でピタリと止まる。怪訝な表情を浮かべてぺたぺた触る。そして何かに気付いたのだろうか、恐怖と悲哀が混じった表情でこちらをくるりと向く。
「お、おい。まさか。」
「因みにツケ意外でも期日までに何か物を返してくれないという困った人物にも使うことが出来るんだ。僕も図書館の魔女も愛用する予定。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
長い沈黙の後彼女は何か覚悟を決めたよう顔を下げるとまた一つ息を吸う。
「香霖・・・。」
「なんだい滞納者君?」
「私は何か悪いこと・・・、いや、もうしてしまったか。なんで私がそんな辛い目に逢わなくちゃいけないんだ?私は香霖にやってはいけない事をしたのか?こーりんはわたしの事嫌いなのか?」
とうとう耐えかねて泣き出してしまった魔理沙。両目から真珠と比喩されてもいいだろう、綺麗な水滴が地面と接吻した。
・・・とりあえずこーりん1000ぺん死なす。
そんな魔理沙をなだめる泣かせた張本人はと言うと、魔理沙の肩をしっかり掴んでいる。
「大丈夫だよ魔理沙、僕は君の事を嫌いとは思っていない。それにね――」
「うう・・・、グスッ?」
「だってこれは夢だから
――何をやってもいいじゃないか。
ふぇ?
――――ガバッ!!
「ハァ―ハァーハァ!」チュンチュンチュン・・・。
「・・・グスッ、グスグス。」
「夢で・・・、夢でよかったぜ。」
因みにそのベッドに地図が描かれていて件の危険なもので乾かされたとかいないとか。
余談ではあるがその日の魔理沙はせわしなく動き回っていた。
ヴワル図書館から奪った本を返し、
収集物を売ることで香霖堂のツケを完璧に返済し、
アリスから無断で借りていたネクロノミコンを返しついでに謝罪し、
門番である彼女を中国呼ばわりせず美鈴の本名を呼び抱き着かれていたり、
博霊神社に1万円札を放り込み信仰をささげた後、
身も心も真っ白にした状態で眠りにつき夢の中で霖乃助に頭をナデナデしてもらったそうな。
その魔理沙の不可解な行動に関係者は驚きの声を隠せなかったが、
1ヶ月たったころにはいつもの魔理沙に戻っていたという。
結局は元の鞘へ・・・。
とはならず、彼女が元通りになった日の次の日には霖乃助はボンバー君シリーズを完成させた。
それは魔理沙が夢の中で見たレインボーカラーそのものであった。
どうやら赤字経営打開する為に苦肉の策として作ったとか、
それを知らない魔理沙は悪夢の再来と恐怖に打ちひしがれ気絶、2日ほど永遠亭のご厄介になったとのこと。
一部引用元:文々。新聞
<一体私が何をした!?:終>