大変寒い季節になって参りました。
そんなことは関係無しに中日の優勝が決定したことに対し、お喜び申し上げまする。
正直上り調子すぎて現実味が無い感じがしますが、
やはり応援してるチームが勝つと何かこみ上げる物がありますね。
さて、SS完成しましたので早速乗せてみます。
今回はスクライドの兄貴ネタがちょっと強めです、
パロティネタや文才の無いSSが嫌いな方は気分を害するかもしれません。
が、それでもいいという優しい方が居ましたら続きをどうぞご覧になってください。
太陽が相変わらず強烈な熱線を止めること無く、
そこらへんの岩で目玉焼きが出来るかも知れないと思案してしまう程にとにかくその日は暑かった。
日光が地面を、荷物を入れた鞄を、
黒白の2色で統一されたエプロンのような服と三角帽子をわざわざ照らしてくる。
それに関して言えば頼んでもいないのに一々世話をしてくる近所のおばさんのような物で、
普段無いと困るしたまになら有難いが、頻繁にあるともっと余計困るので魔理沙はこの夏の日差しという物がとても好きにはなれなかった。
とはいえども、
(暑いぜ、暑いぜ、蒸し暑くて死ぬぜ。っと、定例の文句はもう飽きたか?)
と、誰に対しての思考なのかは解らない事を考えながら目的地まで急ぐ。
もうこの辺りは森の出口付近で慣れた道、いつも香霖堂や人里へ赴く時に自然と使っている獣道である。
そもそも箒があるので魔法使いらしく飛んだほうが良いのかもしれないが魔理沙はそれをしない。
魔法の森で飛行することに対しての危険を身を持って熟知しているからだ。
しかし今回のお話とは関係ない上に一部ネチョいので省かせていただこう。
「やっと飛べるぜ。」
とうっと子供らしい掛け声を上げると彼女は箒に跨りばびゅーんと空へと飛んで行った。
必要無いと思われるが一応言っておくと今現在夏真っ盛りである。
魔理沙は何時もの格好で、この日差しの中空高く飛んで行った。
つまりまぁ、目的地に着く頃には確実に汗だくな訳だ。
案の定汗だくの彼女を撮影しようとした鴉天狗が何時ものように打ち落とされた。
・・・が、彼女の手には確実に汗によって服が地肌に吸い付いた魔理沙を写した写真のネガが握られていた。
後日、裏オークションにて通称knowという人物が即決で落としたとか落とせなかったとか。
魔法の森のはずれにある道具屋香霖堂は、今日も慎ましやかに営業している。
店内は元々の薄暗さを彩るように所狭しとその物体が並んでいる、それらは少々趣味がずれた店主が地道に仕入れた大事な商品である。
この店の店主は物の名前と用途が判る程度の能力を所持している、まさに道具屋を営むために与えられた能力なのだが
結局それらの道具の使い方までは判らないので集めた道具を持ち腐らせたり、その物の価値がわかる人物に騙されて格安の値段で売ってしまったり、
逆にあまり価値が無い商品の値段を高めにして販売してしまったりする事もしばしばあり、実際あまり能力としては下級だろう。
それらの商品は手入れが行き通っており、埃一つ・・・と言われると流石に困るが綺麗に、そして丁重に扱われているようだ。
先程趣味がずれた店主と言ったが、正確には思考がずれている店主といった所か、
その店主はといえばカウンターの向こうで無表情に黙々と読書を満喫している。
彼のずれている所説明するとすれば、店を趣味で経営している所が一番に上げられる。
他にもスイッチが入ると饒舌になったり無闇に酒に強すぎるなどだが、割愛しておこう。
そのずれてぶれている店主がふと顔を上げると、開きっぱなしになっていた店の入り口に居る少女の姿が目に写った。
「やぁ、君かい。」
「ああ、私だぜ。」
見るとそこには常連である魔法使いの少女が汗だくで突っ立っていた。
この暑い中、太陽の光を吸収する黒い装いをしてここに来ている時点で自業自得なのだが・・・。
「とりあえず例のドライヤーってのと風呂をここにいる間借りて行っても良いか?」
「とりあえず聞いてきたって事はレンタル料金を払ってくれるという事で良いのかな?」
冷ややかに返すと即座にでも断るぜと笑いながら爽快に返された。
カウンターの上に先程まで読んでいた本に栞を挟んで置き、彼女の汗をふき取るタオルを即座に渡す。
誤解があるかもしれないが、彼女は風呂に行くとは言ったが、間違いなく商品を見てからいくだろう、
そして汚い手や格好で商品をベタベタ触るであろう。少なくとも彼女はデリカシーの無い女性という分類だから、
商品を汚されるのを防ぐ為に渡すのだ。決して紅魔館のメイド長のようにくんかくんかする訳では無いし少女趣味も無いとだけ言わせて貰おう。
「おお、気が利くな。何時からサービス業を始めたんだ?」
「この店を建てた瞬間からだよ。」
と、ため息を一つついてから諭す。
そもそも店自体がサービス業と言うのを魔理沙は知らないのだろうか?
少々呆れながら風呂場へと向かう彼女を見送る、
まだ湯を張っていないがこの暑さならむしろ水の方が有難いだろう、水風呂なら大した準備など必要無い。
こちらも非常に楽だし向こうも助かる、一石二鳥とはこの事だ、うんうん。
「・・・知らなかったぜ。」
「サービス精神なんて物を見せてない僕が言う事じゃないかもしれないが、これはちゃんとしたサービス業だよ。」
「じゃあ早速サービス精神を出してもらおうか?ついでに氷水も。」
「サービスを行う対象はツケを溜め込まない礼節を持ったお客様だけだよ。」
無論あの弄りやすい半霊の子は反応が面白いから敢えてしないのだが。
「とりあえず風呂に入らないのかい?それなら早速お引取り願うけど。」
「・・・むぅ、忘れてた。行って来るぜ。」
そう言うと彼女はどたどたとわざわざ騒音を立てながら風呂部屋の方へと駆けて行った。
しばし店内にまた静寂が戻り軽く商品を見回し、先程読んでいた本を手元に寄せながらコーヒーで一服する。
コーヒー独特の香りと苦味が口内を満たす、コーヒーにはリラックス効果もあると文献に載っていたがまさに今実感出来た。
その本にはコーヒに含まれる栄養素にはカフェインという物が多く含まれていて、
覚醒作用や脳の動脈の収縮を助ける作用があり、眠気、倦怠感、頭痛等に効果があるそうだ。
まさに今の僕の悩みの種を解消してくれる素晴らしい物と実感しつつまた口へ運ぶ――、
「あらあら、私にも一杯頂けないかしら?」
「ガボッ!――ッ!ゲホゲホ!!」
突然出現した紫に驚いて色んな物を噴いてしまった。
いくら神出鬼没でも限度があり、背後から突然出現されてしまえば驚かない事など不可能な訳で、
「あらあら大丈夫かしら?」
「ケホッ!ゴホン!・・・いきなり驚かさないでくれるかい?」
「ん~、いきなりじゃないと驚いてくれないじゃない。」
つまりコーヒーを飲んでいる所を確認し、驚かして吹かせるつもりでいたようだ、
その所為で入荷したばかりの本がコーヒー特有の香しい匂いを発するように・・・。
「あー、せっかく入荷した本が「ところで用事があるんだけどいいかしら?」
無視か。相変わらず強引な――
「いいかしら?」
とりあえずモノローグを中断させないでくれ。
とりあえず立ち上がり、色々と大変なことになってしまった本を処理する。
少なくともいつも以上に礼儀をわきまえない彼女に憤慨しつつ話を聞く。
「流石に一言謝っては欲しいんだけど?」
「ふーん、だってわざとやったのにわざわざ謝る訳ないじゃない。」
「威張る事じゃないだろう。ああ、もういい。それで用事って「実は御願いしたいことがあるんだけど?」
せめて最後まで言わせ「早速だけどこれを鑑定して欲しいんだけどいいかしら?」
何時の間にかカウンターの前に移動した彼女が、スッと何かを問答無用で差し出して来た。
・・・。最早なにも言うまい。
「何か言ってもらわないと困るわよ、これの識別が出来ないじゃない。」
「だったら人の言う事は最後まで聞くんだ、どんなに急いでいてもね。それと人の思考を境界の能力で読まないでくれ。」
紫が登場してから地の文がせせこましくなってしまった。まぁ、しょうがない。
彼女は天災のような物でどうやっても僕程度じゃ抗うことなど不可能であるからして即効で諦める事にする。
「一体貴方の中で私はどういう扱いなのよ。」
震え声を伴った引きつり笑顔で年増大妖怪が言う。
「とりあえずこういう悪戯ばかりしている時点で扱いを良くして貰おうと考えられるのも凄いことだと思うよ。」
うんうんと答えた。とりあえずヒクついておでこに解り易い怒りマークを付けた彼女をスルーして、差し出された物を詳しく見てみる、
と、それは悪趣味なピンクの逆三角縁のサングラスのようだ。
「鑑定するまでも無くただのサングラスだと思うけど・・・、おや?」
手に持って見るとそれはどうやらただのサングラスとは違うようで、名前も用途も凄く変わっている物だった。
「ね?ただのサングラスじゃ無いでしょう?」
腰に手をあてわざわざ室内で日傘を刺す彼女に突っ込みを入れるのを諦めつつこの品物を説明することにした。
「ふむ、クーガー兄貴のサングラスという物だね・・・、用途は早くなる為に使う?」
いきなり訳が判らない用途であることに対しあきれながら溜め息をつく。
まず、第一にクーガーとは誰で、何者で、何処をどうやったら早くなることに使えるのだろうか?まったくの謎である。
「やっぱりね、まさかとは思ったけど。」
少し間を置いて怪訝な表情で紫が呟く。
少なくとも彼女はこれを何か断定していてかつどのように扱うかも知っている筈、疑う余地も無いだろう。
「・・・で、これは一体何なんだい?」
少し気になったので聞き返す。
・・・・・。
暫く沈黙が続いたかと思うと目をすこし見開いて
「クーガーのサングラスよ。」
と、腰に手をあてすこし自慢気に言い放った彼女に怪訝な目線を送る事にした。
まったくでもって説明になっていないしなぜ偉ぶる必要があるのか?
「まぁ効果は試してみれば判るから後で教えるけど要するにとにかく早い能力を持ち、速さを探求し尽くしたある人が付けていたサングラスね。」
なるほど、合点がいった。以前読んだ文献に記述してあった事なのだが、
それによると強い能力を持っていると特に使用者が死ぬ間際、
使用者が所持していた能力や伝えたかった言葉や、思想、理念や、怨念などが残ることがある。
主に委託と言う言葉に当てはまるだろう、強すぎる能力者は死んだ後も世界に影響を及ぼすのである。
文献に載っていた例を挙げると
龍は死ぬ間際、子供対し自分が持っていた能力を継承させるために能力を具現化させる結晶を作り出し、
ある人物の骨が物質と物質を合成させるマジックアイテムになったり、
死刑執行を行っていた剣が血を吸う事によって切れ味を増す能力を得たり、
魔女が愛用していた服が魔力によって強化されたりしたそうだ。
有名なユニコーンの角の杖などもそれに分類されるだろう。
「ふむ、なるほど。だから早くなると言う効果が移ってしまったという事だね。」
顎を押さえてなるほど、と呟く。
「そういう事よ。じゃあ早速使ってみるわ。」
と言った彼女だが何故かカウンターの中に入り僕の方へと迫ってくる。
もうすでに遅いだろうが僕の思考に警告が走る、逃げないとその道具の実験体に――
「えいっ。」
やはり既に遅く、奇抜なサングラスは眼鏡の変わりに僕にしっかりと装着された。
すこし顔を下げながら心配そうな表情で
「どう?大丈夫?」
と、尋ねて来た。
「まったく心配するくらいだったらまず僕で試さなくてもいいじゃないか。そもそもなんでいきなり突拍子も無く僕で道具の効果を試そうとするのか全くわからないね。稀に君が取る行動を疑問に思ってしまうようん。そもそも先程説明されたけどクーガーと言う人は一体どんな速さを探求していたんだい?言葉?動き?料理?旅?恋愛?そこの所いったい如何なんだいゆかりん。」(この間12秒フラット)
「とりあえず効果は速攻で出たわね。無事でよかったわ。あとゆかりよ。」
「そんな些細な問題なんて如何でもいいさところで質問に答えてくれないかな、ってああ!なるほどこのサングラスの効果は喋る速度が上がってしかも喋る量も限りなく増えるはた迷惑なサングラスのようだね。しかも喋れば喋るほど言いたいことが増えていくし、喋ることに対して何か爽快感を覚えるんだけどやはりこれを所持していた人物の特色か何かなのかなゆかりん」(この間11秒。)
「だから紫よ、人の名前を間違えるところも引き継いでいるみたいね。たしかにそれをつけていたクーガー、通称兄貴は高速のお喋り好きだったわ。」
「成る程、よぉ~く判ったよ。効果もわかった所でとりあえずこの悪趣味で実用しなさそうなサングラスを取ってくれないかな?さっきから取ろうとしてるんだけど取れないんだよこれ。もしかしてもしかすると外れない呪いとか掛かってたりしないだろうね?もしそうだったら困るよ、こんなの周りがピンクで目に悪い悪趣味な物付けてられないじゃないか。あれ?そういえば眼鏡掛けてないのに周りが良く見えるんだけどどうしてかな?」(15秒)
「なんか面白いからすこし見ていてもいいかしら?まるで高速でお喋りできる程度の能力みたいねそのサングラス。」
「・・・何やってるんだ香霖?」
やっと再登場した魔理沙、それにしてもこの魔理沙、実に噛ませ犬である。
「高速で喋れるようになってもいい事無いじゃないか。あ、魔理沙もう出たのか。さっきから頬の筋肉が痙攣してきてのども痛くなって来てるから早めに取ってくれると嬉しいんだけど駄目かなゆかりん?」
「じゃあ取ってあげるからもう少し早口言葉言ってみてくれない?さっきからとても面白いわよ霖乃助。」
「ほほう、早口言葉を喋れるようになるマジックアイテムか、じゃあお題は・・・トイレで頼むぜ。」
「何を言っているんだゆかりんとっとと外してくれ限界だから。トイレ?大抵の人物はトイレがどれだけ崇高なものかわかっていない。 トイレは排泄行為をするだけの場所ではなく、ゆるやかに物事を考えることのできる個室空間なのである。 個人宅のトイレもいいが、やはり通なら公共トイレの個室だろう! 他人が近くにいて、天井には外との隙間があるというのに、プライベートが保障されている矛盾に満ちた空間! 自らの恥部をさらけだした開放感に酔いしれつつ、今後の生き方を考えるのもよし、過去を振り返るのもよし、壁に書かれている落書きを楽しむのもまた一興。 しかも、誰かに覗かれているのではないかという、マゾヒスティィックな要求にも、覗きたいというサディスティィックな要求にも、応えてくれる柔軟性がある。ここに速さは必要ありません!!気持ちを落ち着かせ、開放感に浸りながら便器と友達になる!その便器は友達でーす!!トイレと僕とぉぉぉ・・・。」(この間32秒)
「性格も大分委託されてるみたいね。」
「なんか変態ちっくだぜ香霖。次は旅で・・・ってちょっと壊れ始めてないか?」
「速さ?それはこの世の断りだと言っても過言じゃ無いね!俺はこう思ってるんです!旅は素晴らしいものだと!その土地にある名産・遺跡・暮らしている人々との触れ合い、新しい体験が人生の経験になり得難い知識へと昇華する。しかし目的地までの移動時間は正直面倒です。その行程を俺なら破壊的なまでに短縮出来る!だから俺は旅が大好きなんです。聞いてますか?まりお?ゆかりぃ~ん!!」
「・・・もうそろそろ取らないとやばくなりそうだから取っちゃうわね。」
「性格が完全に変わってしまってるぜ。後、まりおって誰だよ私は魔理沙だぜ?」
「・・・ハッ!ビートまりお!?」
「だからなんだよそれ。」
「この世の理はすなわち速さだと思いませんか?物事を早く成し遂げればその分時間が有効に使えます。遅い事なら誰でも出来る!20年かければ馬鹿でも傑作小説が ――ゴホッゲホ!!」
その言葉が霖乃助が今日の最後には放った言葉であった。
その後喉と頬の筋肉を傷めた僕はスキマ経由で永遠亭へと運ばれた。
そして喉が壊れに壊れ当分一切の会話が御法度となってしまい店の番をする事が出来なくなってしまった。
流石に悪ふざけが過ぎていたのを自覚したのか紫が始めてまともに謝る姿が見れたのはある意味新鮮だったけどもう早口言葉なんてこりごりだ。
どうやら治るまでの間紫の式である藍が店番をしてくれるらしいので安泰なのだが・・・・、
和室をベースにした病室にページを捲る音が静かに響く。
日に当たるベッドの上で小説を読む霖之助が発する本を捲る音と時計の音だけがこの部屋を包み込んでいる。
以前の件で入院を余儀なくされた彼はは一言も声を発することが許されない。
店に戻ることが出来ない店主に出来ることはただ本を読み、偶に永遠亭のウサギ達の食事作りを手伝う程度。
まさに暇で仕方が無い入院生活を送っているが、
「今日も来たぜ香霖。」
「大丈夫かしら霖乃助?」
声を出せないのをいい事にして入院中である彼に悪戯をする悪女が2人。
まぁ、きっと退屈ではないだろうと自己完結し、また彼は本のページを捲る。
パラ、・・・パラ・・・・。
そんな彼が読んでいる本は・・・・。
<ストレィトな香霖:終>