相談所①
本編
紅美鈴の場合。
「えっと、早速なんですが実は悩んでいることが有るんですよ。」
店内のカウンターの前の椅子に座る中華少女がただ、ため息を漏らしていた。
「と、言うと?」
「最近私が下着を付けていない女だと言う噂が紅魔館中に広がってまして。どうしたら皆さんの誤解を取れるのか解らなくて・・・。」
(いっそ本当に下着を着けなければ、なんて言えない・・・。)
「どうしたらいいんでしょうか?」
薄暗い店内と同様に薄暗い雰囲気が蔓延しているようで、
霖乃助は少しこここんなに暗かったかな?と思ってしまった。
「うーん、下手に何か否定すると実際そうなのか?と疑われるだろうから何もしないで静観していた方がいいかもしれない。」
「え、それじゃあ何も解決できないのでは?」
驚いたように目を見開いて言葉を返す美鈴に霖乃助は軽く首を振る。
「いや、『人の噂も七十五日』。下手に行動しなくても根も葉もない噂って言うのは一季節過ぎれば消えてしまう物だよ。
だからそれを話題に上げないように別の話題に変えたりだとか露骨なことはしないで、普通にしていればその内風化するよ。」
余談だが75日というのは一つの季節の期間の日数の事だ。
春72日 夏75日 秋74日 冬70日 土用(注①)74日
つまり季節が変われば噂も消えるという事だね。
注①:土用とは立春、立夏、立秋、立冬の前の18日間の事、どの季節にも属さない。
「そ、そんなものなんですか?」
流石に何もするなと言われて安心するのは確かに出来ないが、現時点でできる最大限の行動だと思われるので。
「騙されたと思って信用してくれないか?人の諺って言うのは大分うまくできているものだよ?」
もう一押し入れて安心させてあげることにする。
「騙されたと思って信用ってそれちょっと矛盾してるような気がするんですが、それに結局下着着けてない件はうやむやになってしまうような・・・。」
「大丈夫だよ、流石にスリットのある服で下着無しなんていうのは非常識だから有り得ないとすぐ気が付くさ。」
「そうですか・・・。じゃあちょっと時期を置いて見ることにしますね。」
「そうしよう、もしそれでも噂が消えなかったらきっとどこかに根か葉があるはず。だからその時期に言いふらしている人物も解るだろう。頑張ってくれ。」
「はい!有難う御座いました。それで御代は――。」
「いや、暇つぶしにやっているような事だから御代は受け取らないよ。それより早く戻らないと魔理沙が向かったとき大変だろう?」
案の定居は魔理沙は来ていない、だからもしかすると向かっている可能性はあるはずだ。
「ああ、そうでした。じゃあお暇させていただきます。本当に有難う御座いました!」
と、言うと彼女は凄い勢いで帰って行った。
「ふぅ、・・・やっぱりちょっと相談ってのは不謹慎だけど楽しいかな・・・。」
と、笑顔を浮かべつつお茶を口に運ぶ霖乃助であった。
ちなみにやはり時期がたったらその噂も風化してしまったようで、
まったくそんな話を聞かなくなったと言う。
まぁそもそもスリットが入っている服で下着無しというのは相当無理があるのでそれも噂の風化を助けたんじゃないかと考える。
後日、美鈴がお礼を言いに来たが、相談を受けた時に十分礼は受けたと断った。
しかしそれでは門番の名が廃るという事で紅魔館の図書館貸し出し証明書を貰った霖乃助は、
頻繁に図書館へと赴き、さらに雑学を深める事が出来た。
稀に門番・店主・魔女・子悪魔といった変わった面子で図書館にて茶会を催し楽しい一時を送っているとな。
相談所①
解決!
相談所①のオマケ1/2
香霖堂を訪れる黒白魔女が一人、細々と突っ立っていた。
「最近店が閉まってる事が多いな。」
「・・・久しぶりにパチュリーにちょっかい出しに行くぜ。」
ちょうどその頃茶会の店主さん、そこを魔理沙に発見され、色々嫉妬されて一騒動。
結果として
「香霖、紅魔館に行く時は私に言え。乗せてってやるから。」
と、たびたび二人乗りしている二人が見えるそうな。
それにしても魔理沙が門を強行突破するたび毎回蒸発する美鈴はまた給料が下がったそうな。
・・・新たな問題発生?
相談所①のオマケ2/2
店内に展開されるスキマが一つ。
「霖之助さんが居ないわね。」
「・・・ちょっと探してみようかしら?」
案の定茶会の途中発見された店主さん。
「仲間はずれなんて酷いじゃない。」と少々お怒りの紫さん。
「おとなしくしてるのなら一緒に紅茶でも飲まないか。」と店主さん。
大層喜んだ紫さんは「うふふ、そうするわ。」と万遍の笑顔。
今日も賑やかな茶会が図書館で行われているようです。